豊洲市場ドットコムの八尾です。フルーツ仕入・水産仕入・米仕入、様々なジャンルに関わる私ですが、昔からあこがれる土地がありました。
それが「佐渡」です。
佐渡は暖流と寒流の交わる豊かな海に囲まれているため豊富な海産物が獲れるだけでなく、りんご栽培の盛んな土地でありながら、みかんの北限と言われ、この2種の果物が一緒に育つ土地は全国でも佐渡だけと言われています。
また佐渡の米は旨いと高い評価を受けており、朱鷺と共に暮らすことを目標に農薬や化学肥料を抑えて育てているというのも魅力です。
そんな佐渡へ取材で訪れる機会をついに得ました。
豊かな佐渡の景色を少しでもお伝えできればと思います。

東京駅から新幹線と高速船で4時間。断崖絶壁に阻まれた佐渡は古くから流刑地としても知られます。地形だけでなく本州との間に島が無く、脱出が難しいことも理由の一つです。
日蓮のような宗教家や、世阿弥のような芸術家、そして順徳上皇をはじめとした貴族などの文化人も流されてきました。
そんな文化的側面に加え、佐渡の金山開発は江戸幕府に莫大な富を生み、多くの人が入植したため米の栽培も広がったと言います。
【佐渡の米作り】

東西約30km南北約60km、面積は854㎢で日本の離島としては2番目の大きさです。島には標高1,172メートルの金北山をはじめ多くの山々がそびえ、冬の豪雪が島中に雪解け水を供給します。
この冷たく清らかな水が流れ込む佐渡の水田は、とても美味しいお米が育つと高い評価を受けています。
また、海が近いため潮風がミネラル分を運び、微量要素を多く吸収したお米は味が濃く豊かな香りに仕上がります。
そして日中は山から、夜は海から風が吹くことで、虫が付きにくく病気もかかりにくくなります。環境変化に弱く一度絶滅した鳥 朱鷺 との共生を目指すために、この環境を生かした減農薬栽培が広く取り組まれ、現在はトンボやカエルなど多くの生き物が息づく田んぼが広がっています。
【様々な果実の産地】
佐渡には多くの果実がありました。8月中旬はまだ色づいてはいませんでしたが、新潟名産の平核無柿が広く育てられていました。平核無柿は「おけさ柿」とも呼ばれ、これは佐渡おけさという民謡が語源と言われています。

その柿の隣にあったのがみかんの樹です。
みかんは寒さに弱い植物で、静岡や和歌山、愛媛など温暖な環境を好みます。佐渡は緯度が高いためみかんに不向きに思えますが、暖流がもたらす暖かい風により、南部を中心に水はけのよい斜面での栽培が盛んです。みかん栽培の北限と言われる佐渡みかんです。

そしてリンゴです。水はけがよくミネラル豊富な土壌はリンゴに最適なため、島内各地で栽培されています。人気の品種ふじを中心に日当たりの良い斜面での栽培が盛んです。また、暖流のおかげで雪が積もる時期が遅い為、地域によってはじっくりと樹にならせ熟度を高く仕上げられるという魅力もあります。
前述のみかんとリンゴが同じ地域で収穫され産業になっているのは、日本中探しても佐渡くらいです。

さらに近年はイチジクの栽培も広まってきています。
もともと葉たばこの栽培が盛んだった小木地区では需要の低下を機にイチジクへの転換を始めました。特にフランス原産で味の良さで人気の高い黒イチジク「ビオレソリエス」の栽培を始めました。珍しい黒イチジクはフランス料理人がソースの材料に欠かせないと徐々に人気を高めています。今後の展開が楽しみな佐渡のフルーツです。

【佐渡の水産物】
佐渡は四方を海に囲われた離島のため、豊かな海産物が上がります。特に暖流と寒流が交わるため、マグロ・ブリ・サバ・アジ・タイ・コブダイ・鮭・サクラマス・南蛮エビ・ズワイガニなどすべて佐渡水揚げで揃うというのが凄いところです。
また近年は海上養殖で銀鮭(佐渡サーモン)やサクラマスの養殖がおこなわれています。

また、佐渡は岩牡蠣の産地として有名な一方、島内の加茂湖では真牡蠣が養殖されています。関東圏では入手が難しいですが100年以上の歴史を誇る味の良い1年牡蠣です。
もともと淡水湖だった加茂湖は明治時代に海とつなげられ、山の栄養が流れ込む汽水湖となりました。この環境が牡蠣に最適で、一時は湖中が牡蠣の養殖いかだでいっぱいだったそうです。
今では高齢化により業者は減りましたが、栄養豊富な環境で育つ牡蠣はカキフライが特に旨いと、高い評価を受けています。

佐渡は明治になるまで「佐渡国」という一つの独立国でした。この島だけで国をなしていたという、その豊かさに今回は触れることができました。
今回取材した生産者や産品は、そのうち当店でも取り扱いが始まりますので、ぜひご期待いただければと思います。
独自の気候・環境が生み出す特別な味覚を、全国にお届けします。
