いちご だんめん図鑑が出来るまで(第3話)


こんにちは、築地市場ドットコムのTwitterの中の人です。
いちご だんめん図鑑が出来るまで、今回は苺の断面図を撮影した時のお話の続きと、撮影後にした事あれこれについて書いてみたいと思います。

前回は初めての撮影に立ち会いで参加させて貰った時の事を書いてますが、その後も数回撮影を行いました。中の人はこの時が2回目の立ち会い。確か小学館の編集部に直接届いた苺と、中の人が築地市場から運んだ苺、あわせて5~6品種くらいをまとめて撮影したんじゃなかったかな。


スタジオはいつでも自由に使える訳ではないので、基本的に「この日に撮影しまーす!」と決めてスタジオを予約し、その日にあわせて苺を手配します。この日、空いていたスタジオはとても大きなところでした。ガチのモデルさんとかが多分ここで撮影してるんじゃないかしら…というスタジオの大きさと、ちんまりとした苺の小ささのアンバランスさがシュール。

 

苺の断面図を綺麗に撮影するコツとは


「もう苺をカットするのは慣れました」と仰る編集部の方が、スッと軽やかに苺をカットしてくれました。
Twitterのフォロワーさんにも編集部の方にも聞かれたのですが…。「綺麗に苺をカットしてますよね」とか「断面図を綺麗に見せるコツはありますか?」とよく聞かれるのですが、正直コツはありません(笑)。会社にある一番切れる包丁を使っているだけなんです。あとは、思い切り。躊躇しないで、スパッ!と一気に包丁を入れる事くらいでしょうか。


それよりも大事なのは、カットしたあとに断面をティッシュなどでおさえて果汁によるテカリをおさえてあげる事でしょうか。断面図の写真を撮り始めた頃、今よりも気軽にササッとカットしてパパっと写真を撮っていたのですが、断面がテカテカしていると反射をしてしまって綺麗に写真におさめる事ができなかったんです。
という訳で、苺をカットする人→テカリをおさえる人→撮影台に運ぶ人、という連携プレーでこの日も次々と苺の断面図を撮影していったのでした。


まあ、カワイイ!\(^o^)/
カットしてみたら実はあんまり可愛いくなかった、とかもあります。そんな時はカワイイ断面図が撮れるまで何個でもカットします。妥協はしません!

ちなみにこの苺の断面図、白いスジのような線がくるんと輪になっていて、そこから外側に向かって均一に広がっていて素晴らしいと思いませんか?この白いスジは維管束と言って、苺全体に水分や栄養素を運んでくれるという大事な役割を持っています。


ヘタを整えたり、水分をふき取ったり、角度を変えたり…。手間暇のかかる作業です。でも、こうして皆さんと一緒に作業をしていると「作ってる!」っていう実感がすごくあって、確かに時間もかかったし大変だったけど(なによりも苺の手配が本当にストレスだったw)今となっては全部よい思い出になっています。

 

絵本図鑑のこだわり色々、ご紹介します


撮影のあと、小学館の編集部にお邪魔していちご だんめん図鑑の打ち合わせもしてきました。これは見本誌です。表紙も中身もなーんにも印刷されていない真っ白な本。
サイズ感や紙質などをチェックする為のものなんですよ~。実際に同じ規格の本も何冊か見せて頂き(背景にうつっているもの)イメージがなんとなく掴めてきました。


それから、実際に掲載する苺の品種の絞り込みと、それに沿って中の人が書いた原稿(全部自分で書いてます…!)の内容のチェックを行います。最終的には小学館の校閲部の方々がチェックをして下さったのですが、それ以前に日本語としておかしくないか、漢字にするかひらがなにするか、文字数をキッチリおさめられるか、表現をどうするか、など編集部の方と相談しながら決めていきます。これ、めちゃくちゃ細かい作業です。幸いな事に中の人はA型で割とキッチリ細かい性格をしているのでそれほど苦痛ではありませんでしたが、苦手な方は苦手だと思います。

画像は中の人の原稿の一部。さて、いちご だんめん図鑑ではどのように文章が変わっているのでしょうか。


そして、そして!
会社で何度も原稿を書き直していたある日、編集部から嬉しい1通のメールが届いたのですが…なんと!巻末に収録されている「いちごの産地 日本地図」を画家の牧野 伊三夫さんがわざわざこの絵本図鑑のために描いて下さったのでした。ぎゃー!嬉しい!ご存知の方も多いと思いますが、映画にもなったかもめ食堂の装丁なども手掛けられている牧野さん。ゆるゆるっとした感じの作風がカワイイ苺ちゃんたちのふるさとマップにとてもマッチしているんです。是非この日本地図は見て貰いたいと思います。

 

画像は絵本図鑑のデザイナーさんにお渡しした指示書というか、日本地図の素案です。これは中の人が自分で作りました。これを元に、牧野さんの日本地図(イラスト)の上にデザイナーさんがコツコツと全42品種の苺を並べていって下さったんです。本当に細かい作業だったと思います。ありがとうございました。
ちなみにこの日本地図の上では、基本的にその品種が開発された場所や育成者がお住まいの場所を掲載しています。例えばとちおとめは今は全国どこでも栽培されていますが、栃木県を代表する品種なのでこの日本地図の上では栃木県という訳ですね。

最後に、いちご だんめん図鑑には掲載した全42品種だけのオリジナルの分布図も収録されています。しかも絵本図鑑から取り外しが出来ちゃいます。眺めるもよし、壁に貼るもよし、持ち運ぶもよし。実際にその苺を食べる時に照らし合わせてみてください。

画像はこれも中の人が絵本図鑑のデザイナーさんにお渡しした指示書の一部です。これまでにTwitterで発表してきた分布図とは若干配置が異なります。
これもよく聞かれるんですが「甘い、酸っぱいなど味についての分布図は作らないのですか?」というご質問に対しては基本的に「作りません」とお答えしています。なぜなら、味についての価値観は人それぞれだと思うからです。中の人が「この苺、甘いなー」と思っても別の誰かにとっては「え、酸っぱいじゃん!」って事もあるんじゃないかな、と。それは、その人がそれまでに食べた来たいろんな苺(を含む食べ物)の中から相対的に感じる「味」なんですよね。美味しいと思う人もいれば、そうでもないという人もいる。それはきっと、どちらも正しいと思うのです。なので、なんというかそういう人それぞれの好みによるものを中の人の価値観だけで決めるのはなんだかなー、と思うので今後も味についての分布図は作らないと思います。

いちご だんめん図鑑が発売されて少し落ち着いたころに公開した、苺の断面図カタログの最新版はこんな感じ。ね?全然違うでしょ?
Twitter公開用と、絵本図鑑用と、どっちも同時進行で作成していたので当時は死ぬかと思ったよ!

★苺の断面図カタログ Ver.04→05(2018年最新版)はこちら

こんな感じで撮影も終わり、絵本図鑑の発売日も決定し、とにかくひたすらチェック!チェック!チェック!の日々に入るのでした。つづく。