【養鰻編】自然に近い環境の中で旨いうなぎを追求する「三河一色産うなぎ」を取材してきました

食文化スタッフの田賀です!今回私は愛知県西尾市一色町にある三河淡水さまの養鰻場、加工場、うなぎ割烹「みかわ三水亭」に訪問しました。
本コラムは「三河一色産うなぎ」に注目し【養鰻編・加工編】の構成にしています。

【加工編】はこちら▲
目次

    三河一色で健やかなうまい鰻を追求する「三河一色産うなぎ」とは

    120年の歴史を誇る「三河一色産うなぎ」

    稚魚(シラスうなぎ)が地元で採捕できた三河地域では、明治37年に養鰻業がはじまり、以来120年以上もの間、全国にうなぎを届けてきました。

    一色町のすべての養鰻池には、他産地とは異なるポイントが大きく2つあります。
    ひとつ目は、養鰻専用水道によって取水された矢作川の清流水を使用していること。
    ふたつ目は、養鰻池の底が山土でできていること。
    「三河一色産うなぎ」は、より自然に近い環境で手間ひまかけて育てられ、ストレス少なく成長するのです。

    健やかに育った活鰻は、肉厚で良質な脂がのり、 問屋や職人がこぞって認めるおいしいうなぎに育ちます。

    養鰻業者と鰻料理店を結ぶ活鰻の卸問屋として昭和52年に創業、活鰻取扱い数量は年間5,000トンを越える「三河淡水魚株式会社(以降、三河淡水)」は、質・味の良さで知名度を誇る「三河一色産うなぎ」を卸すにとどまらず、本物の旨いうなぎを追求し蒲焼きにも徹底的にこだわります。

    ポイントを簡潔にまとめます。

    三河淡水「三河一色産うなぎ」のポイント

    ①自然に近づけることで、ストレスなく健康でおいしいうなぎに育てる養鰻池の環境づくり

    ②うなぎの池揚げ、選別、立て込みにも、すべてに行き届いた熟練の技とやさしさ

    ③1尾にかける時間は10秒以内。早朝から1尾1尾、丹精込めて素早く開く職人の割き

    ④外はかりっと、身はふっくら。手焼きを再現するように、強めの火力でしっかり焼き込むこだわりの焼き

    【養鰻編】では①と②についてお話していきます。

    “自然に近いうなぎ”を追求する養鰻池の環境づくり

    100年以上の歴史と実績を持つ愛知県三河一色での養鰻。稚魚のしらすうなぎから成魚まで一貫して育てます。

    養鰻には矢作川の清流水を使用している

    うなぎに一番大切なものはやはり水。一色町の養鰻池の水質は、昭和38年に敷設した養鰻専用水道により矢作川の清流水を惜しみなく使用しています。つまり、限りなく自然に近い環境でストレスが少なく育つのです。

    長年養鰻に携わる担当者は“うなぎは餌で育てるのではなく、水で育てると言っても過言ではない”といいます。
    実際池の水は、透き通るような綺麗な水ではなく、バクテリアを大切にした健やかな川の水のようです。

    水車は常に稼働
    ほっぺがぷっくりとした健康なうなぎ

    水温は、ビニールハウスとボイラーによって年中約30度前後に保ちます。
    さらに池では水車を回し、新鮮な空気を入れたり、水流によってうなぎがのびのびと成長できるようにしているのです。

    養鰻池の底は山土でできている

    養殖池は全面コンクリートが主流ですが、一色町では池の底は山土です。
    うなぎは本来、川や沼地で育つもの。出来るだけ自然な環境に近づけるためです。

    水を張っていないしらすうなぎ(稚魚)を入れる前、準備段階の池には、そこかしこに草が生えています。
    一見、放置して雑草が生えてしまっているのではないか?と、思います。しかし、これには意図があり、あえて生やしているのです。

    元気な雑草!

    草に余分な養分を吸わせてグングン育て、水を張る前に丁寧に草取りをします。肥育環境を安定的に整える知恵です。

    また、底の土は毎年入れ替えています。これにもこだわりが。
    なんと、近隣の山からわざわざ山土を採取してくるというのです。
    大変な作業が発生しますが、より自然に近い状態を再現すると共に、うなぎが肥育しやすい池を作るための重要な作業として徹底しています。

    選別作業はまさに職人技

    健やかに育ち、成長が早い個体は約150日という早さで養太(ようだい)と呼ばれるサイズ(約1尾140g以上)になり出荷されます。時間をかけて大きくなったうなぎと比べ、身が柔らかく、脂ののりも良いです。

    どうまん(魚籠)
    氷水で冷やしこまれたうなぎを選別台へ

    肥育されたうなぎを池揚げするためには「すくい」という作業を行います。
    養鰻池の中に人が入り、受け網と呼ばれる網を使って大まかな選別がされます。すべて人の手で、網の目をくぐることのできない養太サイズのみを「どうまん」と呼ばれる魚籠にいれ、氷水でしめて暴れないようにしてから立て場へ運びます。

    また、池揚げされる前には、投薬の有無にかかわらず、残留医薬品検査が行われます。抗生物質などが残留していないことを確認してから池揚げされます。

    うなぎ一尾一尾を目視で
    流れる速さで選別

    池揚げ後は「とおし」と呼ばれる台を使用して、活鰻を一尾ごと選別します。
    台は一般的なステンレスではなく木製。うなぎに余分な刺激を与えず、傷つけないようにしています。

    「立て場」では元気な状態で活かしながらも、泥を吐かせて匂いを消します。
    立て込みに使う水もすべて矢作川の清流水です。

    養鰻から池揚げ、選別、立て込み、出荷まで全てに行き届いた熟練の技とやさしさが表れていると感じます。

    さて、次は“焼き”の工程。おいしい蒲焼きが出来上がるまでのこだわりに注目していきましょう。
    後編に続きます。

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