社内日本酒試飲会開催レポート

こんにちは、食文化・酒担当の小林です。

愛媛での商談会、その流れで訪れた岡山、そして秋田からのサンプルと
日本酒がずらりと揃った2月某日、全て一緒に比較しながら試飲会を行いました。

「試飲」というと、どんな香りがするとか、
重いのか軽いのか、甘いのか辛いのか、のようなものを想像するかもしれませんが、
それでは単なる「味見」です。

私たちの「試飲」は、実際に飲むシチュエーションを、文字通り「試し」ます。
だから、食べ物が必ずセットです。

今回は各地の日本酒ということで、地の物から選びました。

米から作られる日本酒であろうとブドウから作られるワインであろうと、
その源は言うまでもなく農作物であり、その地の自然を反映したものです。
私はそれを「地酒」といいます。

そしてそれは、その地の食文化と密接に結び付いています。

それを再現し、実際に試して確認するのが今回の試飲会のテーマです。

まずは岡山から辻本店の御前酒を4種。

合わせたのは、蒜山高原のチーズに乳酸発酵の漬物、山菜の佃煮
そして蛍烏賊と海老の干物です。

岡山なのに牡蠣がない?と思うかもしれませんが、
辻本店のある勝山は山の中。

旧国名で言うと美作で、現在の岡山市など備前に当たる瀬戸内海沿岸とは
食べ物も違います。
だから蛍烏賊も海老も実は鳥取産。

勝山には海産物はむしろ、日本海から干物や〆鯖など
保存用に加工して運ばれてきた歴史があるのです。

そんな中で特にピッタリ合ったのがすぐきの漬物。

辻本店の御前酒は「菩提もと造り」という大量の天然乳酸菌を
生かした伝統製法で造られており、
乳酸の爽やかな酸味が味わいに反映されています。

乳酸発酵が食にも酒にも活かされているのがこの地の文化なのでしょうね。

一方で、蛍烏賊はちょっと難しい。
雄町といえど干物の凝縮した旨味には勝てませんでした。
この辺りは女性の杜氏らしい繊細さにバランスが振れているからかもしれません。

また、特に評価が高かったのがアキヒカリ50。

酸味があるのが特徴で、
それが力強さの突出する雄町を使った他のお酒に比べ、
バランスを作ってくれているのでしょう。

続いては愛媛より協和酒造の初雪盃。

蔵のある砥部町は「清流とほたる 砥部焼とみかんの町」
というキャッチフレーズが付いているように、全国的には焼き物で知られる町ですが、
ここで造られる酒はその通りに、米の旨味よりも水の綺麗さ、
透明感が際立っていました。

合わせたのはじゃこ天に小イワシ、アオヤギの干物、金山寺味噌、
そして河内晩柑と伊予柑のピールです。

中でもドンピシャでうまかったのがアオヤギ。
コンパクトで可憐な初雪盃に足りない部分を補ってくれました。

逆に河内晩柑橘のピールはまさに似たもの同士。
ボリューム感が近いので、本当に寄り添うように合います。
ほのかな酸味、苦味もいいアクセントになりました。

最後は秋田の2本。
これは・・・ちょっと厳しかったです。

アルコール感が立ち過ぎていて、
米の風味など全て覆い隠されてしまっている印象。

米も水も地元のもので、地酒といえば地酒なのですが、
おそらく造りの問題で、そう呼ぶのがはばかられるような、
純米、純米吟醸なのに普通酒のような出来になってしまっています。

いぶりがっこやいぶり豆腐、皮内地鶏のスモーク、ぎばさ、はたはたの干物、
そしてバッケ味噌を用意しましたが、「地の物と合わせる」という
土俵に上げることはできませんでした。

このように、アルコールを飲んだ後の最後のアイテムであっても厳しい視線は失わない、
実のある試飲会になったのではないでしょうか。

こうして吟味した地酒、販売スタートまでぜひ楽しみにお待ちください。

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