いちご だんめん図鑑が出来るまで(第1話)


こんにちは、築地市場ドットコムのTwitterの中の人です。
2018年6月15日、小学館よりいちご だんめん図鑑という絵本図鑑を発売いたしました。フォロワーさんは勿論、築地仲間や苺仲間のみなさんのお手元に届いているようで「読んだよー!」という嬉しいご報告をちょこちょこ頂いております。

このいちご だんめん図鑑の元となっているのは苺の断面図カタログなのですが、「どうして作成したのですか?」と取材でもよく聞かれますので、苺の断面図カタログと一緒にいちご だんめん図鑑が出来上がるまでをまとめておこうと思います。

★苺の断面図カタログ Ver.04→05(2018年最新版)はこちら

フルーツにこんなに種類があったなんて(白目)

中の人が築地市場で働くようになり、早数年。デザイナー(本業です)という職種は変わらないものの、食とは全く異なる業界で働いていましたので、築地市場へやって来た頃は「野菜や果物にこんなにも品種が存在するのか…!」と、当時はかなりの衝撃を受けました。
だって、八百屋さんでお買い物をする時も桃は「もも」として売られているんですよね。桃に限らず、品種が書かれている事って滅多にないんです。せいぜい産地がPOPに書かれている程度。デパ地下に入っているような高級フルーツショップへ行けば話は別ですが、世の中の大半の人はその品種がなんなのかも知らずにお買い物をしているのではないのかしら…?と思います。

毎日商品ページを作成していると、自然と品種や産地の知識が身について来ます。そうすると、フルーツを食べる時もすごく面白いんですよね。自分の好みの味や食感がわかってくると、次からは品種で選ぶ事が出来るようになります。でも、なぜか商品ページには品種名の記載はあっても、その品種についての詳しい説明がありません。それよりも、商品ページではいかに美味しそうに、そして綺麗に見せるかがポイントとなってくるので、高画質の写真や美味しさアピールが重要視されてしまうんです。

 


もう、こういう綺麗系のイメージ画像とかいらないんだよ…!
そう思うようになった中の人は、品種の面白さを世の中に伝える為、「何かよい手段はないものか…」と考えておりました。するとちょうどその頃タイミングよく、築地市場ドットコムのTwitterの中の人を担当する事になったのです。中の人、誕生です\(^o^)/

商品ページでは割と真面目な内容を盛り込んでいるので、Twitterでは商品の裏話であったり、生産者さんの思いであったり、築地市場の日常(落し物掲示板のチェック)など、自由気ままにつぶやいてみました。すると、中の人にとっては何も珍しくない内容なのに、フォロワーさんからは「初めて知りました」とか「ビックリしました」という感想が届くようになったんです。築地市場にマグロが落ちているのは何も珍しくはないのですが、築地市場で働いていない人=知らない人にとっては、それは非日常でありとても面白い事なんだそう。

Twitterだったら品種の面白さを伝える事が出来るかも…と、仕事の手が空いた時間を使って作成した断面図カタログを公開したところ、Twitteの中の人になってから一番多くのいいね!がつきました。それはりんごの断面図を数品種分並べた画像で、あるお客様から「結局どのりんごに一番蜜が入っているの?」と質問されて作成したものだったんです。

★【実録】桃の家系図がバズッた記念に、桃の3部作をまとめて公開しまーす\(^o^)/はこちら

世の中の人は意外と品種の違いに興味を持っているのでは?と思った中の人、調子に乗ってその後も、柑橘、ぶどう、桃など様々な断面図カタログを作成しTwitterで公開をしていたのですが、最も反響が大きかったのは今回図鑑にもなったいちごです。いいね!やRTの数は他の比ではありません。断トツなのです。

★苺の断面図カタログ、13,000リツイート突破\(^o^)/はこちら


なぜいちごはこんなにも多くの方に愛されるのでしょうか?
中の人なりに色々と考えてみました。まず、いちごは赤くて丸くてカワイイ。カワイイものは幅広く愛されており、いちごが嫌いだという人は少ないと思います。カワイイは正義なのです…!
Twitterで公開した苺の断面図を見て「ランチョンマットに使いたい」と言って下さった琵琶湖ホテルさんとの打ち合わせで、「赤い食材はビュッフェでも人気があるんですよ~」と教えて頂きました。蟹やお肉も人気が高いそうですが、スイーツビュッフェではいちごの人気が圧倒的に高く、実際に中の人が取材で訪問した際もスイーツよりも先に生のいちごがなくなってしまったのをこの目で見ました。

そして、いちごは取り分けご当地性が高い。調べてみるといちごは47都道府県、まんべんなく品種登録がなされています。これは極めて珍しいです。恐らく、柔らかな苺は輸送性に優れていない為、地元で消費される事が多いからでは…と推測。そして、子供の頃から食べている味に慣れ親しんでいるからなのか、なんとなく自分の故郷のいちごを応援したくなってしまいます。品種名もその土地にちなんでいる事が多いので、いちご だんめん図鑑巻末の「いちごの産地 日本地図」を見ながらぜひ楽しんでください(宣伝)。

前代未聞の「断面図だけ」の図鑑


Twitterでの苺の断面図の反響は、中の人の予想をはるかに上回りました。1月15日に公開してから3月頃まではずーっとあちこちの取材を受けていたように記憶しています。テレビや雑誌などで取り上げて頂いたおかげでいいね!の数もRT数もグングンと伸びて行き、最終的には図鑑にまでなってしまいました。

事の始まりは小学館の絵本の編集部の方から届いた「苺の断面図を絵本図鑑にしてみませんか?」という1本のメール。苺の断面図だけの絵本。そんなマニアックな絵本を一体誰が読むのか…と心配したのですが、編集部の方の苺の断面図に対する熱い思いを聞かせて頂き、何かの形にまとめる事が出来たら面白いかも、と絵本図鑑をつくる事に決めました。どうせつくるならとびきり可愛いくて、でも図鑑としてもちゃんと使える真面目な絵本がいいよね、って事で中身にも外側にもこだわりをギッシリと詰めこんでつくる事に。
写真は「最近ヒットした小学館の絵本なんですよ」と初回の打ち合わせ時に編集部さんに頂いたパンをモチーフとした絵本です。最近の絵本は本当に凝っています!

 

図鑑をつくるにあたり、まず最初に中の人が行った事は苺の品種のリスト作成です。これがもう、死ぬかと思いました…。苺の品種って本当に本当に沢山あるんですよ~!しかも農林水産省に登録されていない品種や、これからデビューする予定の登録審査中の品種まであり、どのいちごを図鑑に掲載すべきか死ぬ程迷いました。だって、どのいちごもカワイイんですもん!編集部の方は絵本のプロではありますが、いちごのプロではないので、まずはリストを作成したあと打ち合わせをしつつ全体のバランスを見ながら図鑑に掲載するいちごを一緒に選んでいきました。

王道のあまおうやとちおとめは勿論、最近よく流通している品種、ご当地性が高いもの、都道府県のバランスなどを見ながら選んでいったのですが…。中の人がどうしても図鑑に掲載したかった品種が実は2品種あります。ひとつは女峰、そしてもうひとつはとよのかです。現在はどちらもほとんど出回っていませんが(地域によりますが)一時期は「東の女峰、西のとよのか」と言われていた当時のツートップです。でも、築地市場がある東京でもなかなか入手が難しいため、編集部の方からは「撮影に間に合わないから諦めませんか?」と言われてしまい…。

なんとか、この2品種を掲載しなくてはいけない理由を説明する為に中の人が出した例えがこちらです。
中の人「ダメですよ!例えばジャニーズさんの歴史本を作るとして、SMAPを語る前に少年隊とか光GENJIを削るなんて事、できますか?」
編集部「それは出来ないですね…!すごくわかりやすい例えです。載せましょう!女峰ととよのか!」

そんなこんなで、ページ数に合わせて無事に42品種と、予備として+5品種ほどが決定したのでした。ちなみに、全体のバランスを見ながら決定したラインナップなので、決して贔屓している訳ではありません。もし、第2弾をつくる機会があるなら「あれも載せたい、これも載せたい」という品種がまだまだ控えております。いちごの品種はとても多く新品種も次々と登場しているので、全品種を掲載する事はある意味不可能に近いのですが今後もTwitterなどでちょこちょこと苺の断面図は公開していく予定なのでお楽しみに…。

さて、無事に掲載リストが確定し、次はいよいよ撮影です。中の人が自分で撮影しているデータではやはり画質的に問題があるため、プロのカメラマンさんに撮影をお願いしたのですが今度は苺を一気に集めなくてはいけなくてですね…これもまた大変だったなあ。築地市場の仲卸さんはもちろん、都内のデパ地下に入っているフルーツ専門店や地方の苺農家さんなどなど、本当に本当に沢山の方々に協力をして頂きました。この場を借りてお礼を申し上げます。中の人、1人では決してつくる事が出来なかった図鑑です。
そんな苺の断面図の撮影の様子は次の記事でご紹介したいと思いまーす。