幻の黒いちごを求めて…真紅の美鈴の生まれ故郷、千葉県大網白里市へ行って来ました(後編)

苺の糖度対決に中の人も参戦!


こんにちは、築地市場ドットコムのTwitterの中の人です。
真紅の美鈴を栽培しているジョブファームさんの苺畑にお邪魔した中の人と青果担当者ですが、苺の糖度対決に急きょ参加する事になりました。

 

★説明しよう!\(^o^)/
糖度対決とは、ジョブファームさんで時々行われている苺(真紅の美鈴)の糖度チェックを兼ねた、ファームの皆さんによるイベントです。誰が一番甘い苺を見極めて収穫する事が出来るか、を楽しくイベント化する事で収穫のタイミングを見極める訓練にもなります。もちろん、糖度を計測したあとはご褒美に苺を食べる事が出来ちゃいます。

 


ハウスの中へ次々とファームの皆さんが入っていき、糖度が高そうな真紅の美鈴を選びはじめました。その目は真剣そのもの!

 


青果担当者も先ほど高橋さんに教えて頂いた美味しい真紅の美鈴の選び方を参考に、糖度が高そうな苺を探します。中の人も探してはみたのですが、結局どれもこれも美味しそうに見えてしまって悩んじゃう…コレは別の意味で選ぶのが難しいですね。

 

ハウスの中を散策してみる


青果担当者が真剣に苺を選んでいる間に、ちょっとジョブファームさんの苺畑についてご説明しますね。
苺は人間の手による受粉が困難な為、このようにミツバチさんが受粉のお手伝いをしてくれます。ハウスの中もぶんぶんぶ~ん♪と元気よく飛び回っていました。たまにちょっと変な形をした苺を見かける事がありませんか?実はそれ、ミツバチではなく何かの偶然で他の昆虫が受粉をした可能性が高いんです。どういう事かと言うと、ミツバチは苺の花の中に頭をつっこみ(※写真参照)、グリグリと頭でかき混ぜるようにして花粉をとるので、まんべんなく受粉ができるんですって!その結果、ミツバチが受粉を行った場合は良い形の苺ができるのですが、そうでない場合は残念ながらちょっと変な形の苺になってしまいます。

 


こちらはハウスの片隅にあったミツバチさんの巣箱。みんな働き者だなー。
ミツバチの巣箱はただ置けばよいというものではなく、ハウスの中の温度管理も重要となってきます。写真では伝わりにくいと思いますが、ハウスの中はめちゃくちゃ暑かったです。中の人も青果担当者もそそくさと上着を脱いで半袖でウロウロしておりましたが、ミツバチにとっては一番活動がしやすい温度だったみたい。寒すぎると巣箱から出て来ないですし、かといって暑すぎると元気がなくなってしまいます。苺だけではなく、ミツバチにも気をつかわなくてはいけないんですねえ。

 


さて問題です!この苺の苗からビロビロと伸びているのはなんでしょうか?

 


これはランナーといって、苺の親株と子株を繋ぐものです。こちらの写真をよく見ると、中央下の部分から伸びているランナーの先を、左手のポットの中にさしているのがわかりますかね?こうやって次の苗(子株)をつくっているんです。1枚上の写真のほうがわかりやすいと思うのですが、子株はランナーの2節目にできます。ランナーで繋がっている間は養水分や光合成産物などが親子間で行ったり来たりしているそうです。人間みたいにへその緒を通じて親から子へ…という一方通行ではなく、双方向とは。苺、すごいな(・ω・ノ)ノ

 


ジョブファームで使用している苺の肥料や土の一部。いちご培土ですって!パッケージのデザインが可愛い。

 


ジョブファームさんでは真紅の美鈴をさらに美味しく育てる為に、独自に研究を重ね様々な堆肥や栽培方法を試しているんだそうです。こちらはバガスの山。バガスってサトウキビの搾りかすの事なんです。なんでも、千葉県でサトウキビを栽培されている農家さんがいるそうで(知らなかった!)お仕事で引き取りに行った時に「苺の肥料にしてみては?」というアイディアが浮かんだんだそう。

バガス(Bagasse)はサトウキビ搾汁後の残渣。年間約12億トン生産されるサトウキビからは約1億トン(乾燥重量換算)のバガスが発生する[1]。主に紙の原料やボイラー燃料、建築資材、家畜飼料などに用いられる。

(※wikipediaより引用)

バガス引取り・農福連携請負作業・お米の配達(ジョブファーム活動ブログ)

 


サトウキビの搾りかすであるバガス、実は使い道が色々あるそうで、農業の場合は堆肥化し農地に戻すのが一般的のよう。お仕事で貰ったバガスを、また次のお仕事に生かす…という具合に、ジョブファームさんの中だけでも仕事が循環していて、全てに繋がっているのですね。真紅の美鈴という品種の珍しさだけに頼る事なく、さらにその苺の価値を高める為に美味しさを追求しています。堆肥づくりへのこだわりも、より真紅の美鈴を美味しくする為のジョブファームさんの努力なのです。

 


そしてこちらがジョブファームさんが新たに試してみよう!と考えてらっしゃる、ナルナル菌(がくっついてるもみ殻)です。

中の人:ナルナル菌…?
青果担当者:え、それは、あのー、開発者の成川さんのお名前からついたナルナル菌ですか?
高橋さん:違います(笑)。このナルナル菌も良いですよ、と紹介されて早速酒米に使ってみた堆肥なんですけども、来シーズンの真紅の美鈴にも是非使ってみようかな、と考えています。

 


このナルナル菌を使ったもみ殻が入っている袋の中の温度を計測されているそうなのですが、グングンと温度があがってきているそうなんです。めっちゃポカポカ!ナルナル菌を使うと、果物や野菜の糖度がグーンとあがるそうなので、今でもすでに甘い真紅の美鈴がもっと甘くなっちゃうかも…。
ナルナル菌についての詳しい説明は中の人がするよりもこちらのサイトをご覧になったほうがわかりやすいと思うので、お時間がある方は是非どうぞー。

土耕菌ナルナルの働きは、籾殻を分解する際にセルロースに代表される高分子多糖類を、低分子化し土中の微生物が利用できる形にします。
これが、多種多様な微生物繁殖のエサとなり、微生物が土の中で栄えると共に、根に寄生して植物から養分をもらいます。こういう菌たちをエンドファイトと呼びます。

(※南原ファームのHPより引用)

 

さて、いよいよ糖度対決!


ハウスの中の説明が終わったところで、いよいよ糖度対決スタートです!

 


ファームの皆さんが順番に自分が「これ!」と選び抜いた真紅の美鈴の糖度を計測していきます。果汁がすでに真っ赤です。これは甘いに違いない、と実測糖度を確かめてみると…あれ?
高橋さんの説明の通り、色が濃すぎる苺のほうが糖度が低かったり、そんなに期待していなかった苺が高糖度を叩きだしたりと、予想外の結果にみんなでワイワイと大騒ぎです。

 


こちらはファームの方がエントリーした真紅の美鈴。他の苺よりもどちらかというと明るめの赤色です。

 


果たして何度?


惜しい!この苺は12.3度でした!もちろん、この数値でも十分に甘みを感じられる苺ではあるのですが、「もっと高糖度のはずなんだけどなー」とファームの皆さんは首をかしげます。ちょうど取材でお邪魔したこの数日間はお天気もよく暑かったので、水を少し多めに与えてしまったのが原因なのかも…?と、みんなで検証が始まりました。美味しい真紅の美鈴の為に、妥協は許されないのです。

 

真紅の美鈴のアイスクリームもあるよ


ジョブファームさんに頂いたおやつ!真紅の美鈴を使ったアイスクリームです。暑いハウスの中で食べたので、より美味しく感じました。この蓋に描かれているのは、大網白里市のマスコットキャラクターである、マリンちゃんです。今はまだ開発の最中なので蓋は簡易版のデザインとなっています。

 


あまーい!苺を使ったスイーツは仕事柄これまでにも沢山食べて来たのですが、苺の場合はどちらかというとシャーベットやジェラートなどの食感に近いものが多いと思います。でもこのアイスは本当にまったりとしていて濃厚、滑らかな食感を楽しめるレベル高いアイスクリームです。苺を3割程度におさえて、その分ミルク感を出すように配合を工夫されたそう。また、使われているミルクも健康な牛から搾りとられた新鮮なものなので、苺だけではなくミルクの美味しさもちゃんと味わう事が出来るんです。早く販売されないかなあ、楽しみ!
他にも真紅の美鈴を使ったジャムやドライフルーツなどの加工品がありますが、加工品だからという訳ではなく「美味しいジャムになるように」ちゃんとよい苺を選んで収穫されています。また、大網白里市では真紅の美鈴が収穫されるシーズン中(だいたい12~5月)は様々な店舗や飲食店で真紅の美鈴を使用したスイーツなどを頂く事も出来るんです。

 


真紅の美鈴の生まれ故郷、大網白里市も期待をしている新品種の黒いちご。高橋さんいわく、「千葉県は落花生や苺が有名ですが、大網白里市としての特産品はこれまでなかったので、真紅の美鈴で盛り上げていければと思っています」との事。真紅の美鈴をもっと多くの方に知って頂ければジョブファームさんのお仕事も増えます。そうすると、また別のお仕事がどんどん繋がっていって循環する事により、地域の活性化にもなるのですね。
最後にファームの皆さんと記念撮影!苺の事だけではなく、皆さんが楽しく働いている様子や、ジョブファームさんの思いなどを聞けてとても有意義な時間を共有させて頂きました。急な取材訪問だったにも関わらず、快く出迎えて下さり本当にありがとうございました。

 


おまけ。後日、お礼のメールを送ったところ高橋さんからの返信メールにはこんな画像が添付されていましたよー。糖度対決で思うような数字が出なかったのでリベンジです、と言わんばかりに高糖度な証拠写真(笑)を送って下さったのです。ちなみに去年の最高糖度は20.4度だったんですって!来シーズンはナルナル菌の力でどこまで甘くなってしまうのか…今からとても期待しています。

幻の黒いちごを求めて…真紅の美鈴の生まれ故郷、千葉県大網白里市へ行って来ました(前編)

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※2018年4月13日に訪問しました