津奈木町に赴任してからはや半年。100年在来の古木の茶畑を見に行きました。
9月某日、津奈木町にある茶畑を見に行きました。イギリスの世界的な紅茶品評会で、The LEAFIES12022のBEST IN SHOWを取られた梶原さんが譲り受け2021年から手入れをしている茶畑が津奈木町にあるのです。
梶原さんがどんな方かというと、世界各国から選り抜きの茶葉が揃う中、もっとも優れた銘柄に授与される「Best in Show(ベスト・イン・ショウ)」に、日本産の茶葉を日本で加工した“和紅茶”が選ばれました。それこそが、今回お邪魔している、熊本県の生産者「お茶のカジハラ」の梶原さんが手がけたもので、「夏摘みべにふうき和紅茶」です。普段の拠点は球磨の山の中です。
今梶原さんが津奈木町で手掛けているの茶畑は”山茶”と呼ばれる自生の木から定植されたものです。品種はちゃんと調べてないのでわかりませんが、梶原さんが手がける他の品種とは明らかに異なり葉が小さい、とおっしゃっています。
熊本には山野に自生する樹木としての「チャの木」が多く存在します。林業の傍ら、春の柔らかな新芽で釜炒り茶を、田植えが終われば夏摘みの茶葉で番茶を嗜んでいました。かつては田畑の畔にも植栽するほど身近な存在でした。山で焼き畑をすれば、最初に生えてくるのがチャの木だったほどで、あちこちで育てられていたようです。
明治期にはお茶の経済的価値に気付き、明治政府が国をあげて茶業を奨励します。茶の研究所が熊本と大分に置かれ、元幕臣で静岡の多田元吉が、紅茶産地の調査のために明治8年~10年にかけて中国やインドで様々なチャノ木の栽培方法や製造方法、機械を調べ、見本を抱えて帰国しました。国際情勢によって紅茶の輸出や生産量は変動しつつ、今に至ります。昨今改めて和紅茶が注目されつつあります。
熊本県内においても、山鹿や球磨地方を中心に茶の生産が盛んで、その近隣も同様に茶畑が存在しています。
こうした前情報をもとに、どうしても見てみたかった荒れた茶畑。高齢化が進み手入れが行き届かなくなると、チャノキは2~3mほどの大きさに育ってしまい、種がつき、花が咲くようになっていきます。この畑の向こう側は八代海。とても風光明媚な場所にあるんですが、今はこのような状態です。
実は秋から冬にかけて花を咲かせます。9月に訪れた時には少しずつ花が咲き始めていました。実を絞れば「茶の実オイル」ができます。ツバキ科なのでツバキオイルに似ていますが、ナッツのような独特な風味がします。栄養価はオレイン酸、ビタミンE、カテキンが含まれ、オリーブオイル位優秀です。これをやっぱり活用しないといけない気がしている今日この頃。中国では茶油と呼ぶようで、とはいえコーン油や大豆油より収穫や絞るのに手間がかかるので普及していないという現状があります。
さて、今梶原さんが手入れされているこの茶畑は津奈木町の岩崎家のご先祖様が定植した100年ものの昔ながらの在来種の古木を手入れして蘇らせたものです。↓
お茶はもっと売れると思うけど、手入れに限界があって人手が確保できたらな、とおっしゃっていました。左が別の方の手入れしきれていない茶畑。右が梶原さんが3年かけて手入れを続けている茶畑です。
さてその味わいは、葉の小さな系統で、香りが爽やかで雑味がなく、だけれど力を感じる山茶らしい仕上がりとのこと。今回昔ながらの釜炒りのお茶と夏摘みの紅茶の2種をオリジナルで作ってもらいました。11月の津奈木町でのイベントで初お目見えします。私たちも楽しみにしています。
- The LEAFIESとは、英国のお茶の資格認定機関「UKティー・アカデミー(UKTA)」主催、英国初の国際ティー・コンペティション「ザ・リーフィーズ(The Leafies)」が2022年に開催されました。白茶、ウーロン茶、紅茶、緑茶など30以上のカテゴリーに、世界に冠たるお茶大国インド、スリランカ、中国のみならず、日本やハワイ、ミャンマー、エル・サルバドルなど世界20カ国、270以上の生産者から、300銘柄以上の手工芸(アルチザン)ティーがエントリー。世界中から招聘されたお茶のスペシャリストによって、フレーバーやクオリティだけでなく、製造過程や茶園の状況など生産者のバックグランドも考慮に入れて行われる ↩︎