のれんをくぐると江戸の食文化

地域の食文化って奥深いですよね。お店に実際に行くと、五感で楽しむことが出来てより理解が深まります。

いつも社内のメンバーと外食をするときにはテーマを掲げてお店探しをするようにしています。

今回は江戸の食文化を味わいたい!ということで、浅草へどじょうを食べに行くことにしました。今回伺ったのは、駒形どぜう本店です。

お店の前に着くと佇まいからして江戸へタイムスリップのようです。のれんをくぐったら、アトラクションのようなワクワク感とともに、どじょうなべのお出汁の香りが高く香ってきます。

浅草の駒形どぜうの創業は1801年。200余年の歴史があります。

江戸、明治、大正、昭和と時代が移り変わり、関東大震災や第二次世界大戦でお店の全焼という苦難を乗り越えながら、200年を超えて愛され続ける駒形どぜうは昔と変わらぬ味を大切に守り続けています。

そして1番の印象はお店の入りやすさ!予約しなければ入れないなどはなく、基本的には先着順。常連さんも一見さんも変わらずに席に案内されます。ちょっと覗いて席が空いていたら鍋と熱燗をひっかけて・・・も可能なほどに気軽なお店という印象が強いですが、実はそれも駒形さんのこだわりのひとつ。粋を感じます。

どうしてもテーブル席ではない、駒形の名物 入れ込み座敷に座りたい!と思っていたら無事に座れました。1枚板とザブトンが座敷に置いてある、昔ながらのスタイルです。お料理を待ちながら瓶ビールを注文しお新香をつまみます。もうワクワクそわそわ。

店内をぐるりと見渡しながら、お店で使っている道具や機材も見つつ、店内の雰囲気に浸ります。写真のような給湯器なんかももうあまり見なくなりましたが、ここでは現役で活躍していました。(古い旅館や保養施設のような昔から大切に使っているような場所でしか見られないです)

メニューのラインナップはシンプルです。注文したのは、鯉のあらいと、どぜうなべ、どぜうさきなべ、どぜう汁です。ほかには、卵でとじた柳川なべがありましたが、どぜうなべ2種を食べ比べてみることに。

まず出てきたのが鯉のあらいです。

なんとも鮮やかなピンク色が印象的でした。くさみとは無縁で、ヌタのような酢味噌で食べます。鯛を食べているかのような、ただただ旨味が広がる味わいで、見ための美しさも素晴らしかったです。

そしてお待ちかねのどぜう鍋が運ばれてきました。今回は通常のどぜうなべと、どぜうさきなべの2種と注文。通常のどぜう鍋は骨が抜かれていない丸々と肥えたどぜうが使われています。炭火に鉄鍋がセットされた七輪でグツグツと音を立てながら運ばれてきました。そしてすぐに立ち上がる強い醤油だしの香りが食欲をそそります。

当初は天然のどぜうを使用していたようですが、時代が変わるにつれて変わらぬ仕入れをすることが困難になり、店主は天然と変わらぬ品質のどぜうを全国探し回ったといいます。一緒にどぜうを食べに同席していた水産バイヤーがちょうどそのどぜうの養殖場を取材したことがあるようで、温泉成分の水で育てられ、泳ぐというよりも浮遊するように漂っていたのが印象的なのだとか。骨が柔らかく身もふっくら!それはそういう育て方をしているからに違いないです。そして鯉同様にくささなどとは無縁なのです。

ねぎをたっぷりと乗せ、グツグツ。こちらもまた創業寛永2年、徳川三代将軍家光の時代に七色唐辛子を献上した歴史があるという、やげん堀の七味(江戸ではなないろと呼びます)や山椒をふりかけて味わうのが本当に美味で粋です!ねぎをのせてグツグツと音を立てている様子がこちらです↓あぁ~またすぐ食べに行きたい!

どぜう鍋と一緒に注文したどぜうさきなべはこちらです。背割りの骨なしバージョンで食べやすさがあるかもしれませんが、身のふっくら感や旨味など、通常のどぜう鍋に勝るものは無しでした。江戸の時代から残る食文化では背割りが多いです。お腹から割くと切腹の意味があり敬遠されていたためです。

どぜう鍋にねぎたっぷりがひとしきり終われば、今度はささがきごぼうをたっぷりと乗せて味わいます。これまた美味!七味などの薬味がまた良いアクセントで味わいを楽しませてくれて、お酒がすすむのです。

瓶ビールから始まったお酒は、いつからか熱燗に代わっておりました。おちょこがまた可愛くて・・。1つ1つの小道具までもがワクワクさせてくれるのです。そしてぐびっと一気に飲めてしまう危険なサイズ感です。

長くなりましたが、締めはどぜう汁です。どろりとした少し濃いめの味噌汁にどぜうが浮かびます。最後の〆めといいますか、酔い覚ましにもってこい。たっぷりたっぷりと刻まれたねぎが入っていました。

ちくま味噌の江戸甘みそが9割、京都の辛みそが1割で作られているそうです。ちくま味噌はどぜうに合う江戸甘みそを200年以上駒形どぜうのお店専用で作られているそうです。

お店を出た後はしばらくその余韻に浸っておりました。家族ともまた来たいと思える、江戸からの食文化を守り続けていて気軽に入れるお店でした。

昔の時代へタイムスリップも楽しめるお店です。

さて次はどこへ行こう。。

1年1095食の楽しみを。