名店の味 聘珍樓の広東腸詰

最近は青森ネタが多かったですが、今日はちょっと真面目にお仕事の話。

うまいもんドットコムで筆頭目利き人の町田成一が紹介する「名店の味」

私が担当するのは、中華料理の老舗「聘珍樓」です。

今回は何度も何度も商品化をお願いしてきた「腸詰」の取材に行ってきました!

腸詰って聞いたことはありますか?私は以前、中国広東省の広州に住んでいたことがあるので、中国ソーセージの「腸詰」はいつもスーパーにずらずらっと並んでいて味も知っていたのでなじみがありますし、いまだに中華料理を食べに行くと前菜に腸詰があると注文をしてしまうくらい好きな食べ物です。

干して完成に近づいている腸詰です。

腸詰=臘腸(ラプチョン)とは、肉をミンチにして味をつけ羊や豚の腸に詰め乾燥させた硬いソーセージのこと。地域色が豊かで、原料は羊、豚、鳥類のレバー、血を混ぜるなど様々なタイプがあります。

広東式の「廣式臘腸」は、新鮮な豚肉の赤身と背脂を使って甘く味付けした後、風干しで仕上げるのが一般的です。香港でも冬になると、腸詰めが至る所に吊り下げられて売られているのを目にします。冬の食卓には欠かせない常備食材です。

肉に味付けをして腸詰めにして干すだけの食材のため、冬の寒い時期にしか作られない期間限定商品のため、聘珍樓自家製の腸詰も2月の限定品です。

全て聘珍樓の料理人が手作りでつくる腸詰はとてもシンプルな材料で素材の味を十分に生かした優しい味だから、そのままおつまみとしてスライスして食べても、料理に使っても美味しく食べられます。

製造工程を当社カメラマンがすかさずシャッターを切ります。

豚の肩ロース2:背脂1の割合で混ぜ、バラの香りの中国酒と砂糖、塩、醤油とブラックペッパーのみが材料です。しっかり混ぜ合わせたら羊の腸にゆっくりと肉を詰めていきます。、作業をする2人の息が合わないと、肉が出すぎたり少なかったりと上手に肉詰めをすることが出来ないので、ものすごく地味ですが集中して行っていきます。

聘珍樓の総料理長、西崎英行さんです。

長い羊の腸に肉が詰められたら、程よい長さの所を紐で縛っていきます。くるくるっと手際よく回しながら縛っていくのですが、さすが西崎総料理長。とっても手慣れていてあっという間に作業が完了します。

西崎総料理長が縛っている間も、黙々と隣では腸詰作業が続けられます。干すスペースなども考えると、1度の製造で約100本ほど作るのだそうです。

沸騰した湯をかけて殺菌です。

紐で縛り上げる作業が完了すると、今度はソーセージに熱湯をかけていきます。湯通ししてもいいのではないかと思って質問してみると、湯にくぐらせた瞬間、皮が破けてしまうんだよ。あとは、こうして手作業で湯をかけることで皮の張りも良くなって肉はしっとりとした仕上がりになります!とのこと。

100本分もこの作業をすると思うと気が遠くなりそうです。

熱湯をかけて殺菌作業が終わった腸詰は、風をかけられながら1週間~10日干します。

乾燥室に干されます。

乾燥が進むにつれて、ソーセージの色は白っぽいイメージから赤っぽさが出てきて濃くなってきました。硬さを指でチェックしながら10日ほどかけて干しあげていきます。その後、袋詰めし、20分蒸したらいよいよ完成となります。

私は前菜として食べるイメージしかなかったのですが、炒め物にしても、チャーハンやちまきに使ったり、そして炊き込みご飯風にご飯と一緒に炊き上げて、ボーチャイファンという香港飯に使われることなども、西崎シェフが教えてくれながら本場の味を作ってくれました。

タイ米を炊くときに腸詰も一緒にいれて炊きます。お米に腸詰の出汁を吸わせます。

自宅で再現するとなると難しいですが、ジャーを使って炊き込みご飯も美味しいとのことでした。研いだお米に腸詰を入れて一緒に炊き上げて、ご飯が炊けたら腸詰を取り出して細かく刻み、ご飯に戻します。黒胡椒を加えて全体を混ぜたら、ねぎを散らして完成です。

炊き上がったら腸詰をスライスし、豆鼓などが入った特製だれを掛けたらおこげを作りながら土鍋で焦がし焼き、全体を混ぜたら、ボーチャイファンの完成です!

ボーチャイファンは聘珍樓でも本当に限定のメニューだそうです。そうです、料理人の方々が忙しい合間に肉詰めをして干さないとならないですし、ましてや寒い時期にしか作られないとのことで、短期間しか味わえません。

日本でも様々な保存食に触れる機会がありますが、中国や香港、台湾でもこうして新鮮な肉を干して保存食として楽しむ文化があります。中国の北側だと、羊肉やガチョウのレバー、血やトウガラシを入れたものなど地方色が色濃く出るのも保存食の楽しさかもしれません。

広東風はいたってシンプルに素材の味を楽しめるので日本人も大変食べやすいと思います。

近々、うまいもんドットコムにて数量限定販売をしますのでお楽しみに~!

1年1095食の楽しみを。