桃の歴史は奥が深い!紀元前から食されていた果物

こんにちは。食文化1年目の多田です。

秋分の日も近くなり、夏もそろそろ終わろうとしています。
平成最後の夏ともなると、どこか感慨深いところがあったのではないでしょうか。
私は人生で一番多くの種類の桃を食べた夏となりました。
品種で言うと、6、7品種ほどです。
先輩方からしたら少ないと思われるかもしれませんが、
私にとっては、桃の品種を考えながら食べ比べること自体が初めての体験でした。
一番印象に残っているのは、やはり見た目のインパクトが大きい蟠桃です。
思っていた以上に水分が少なく、それでも噛むと濃厚な果肉は、やはり他の桃にはない強烈な印象が残っています。


さて、そんな蟠桃ですが、とても歴史が深く、西遊記伝説に出てきた桃であるとされています。
桃のシーズンは終わりを迎える間際となりましたが、ここで桃の歴史をご紹介しようと思います。
調べていくうちに、桃の歴史の奥深さが分かり、大学生に戻ったように様々な文献を読み漁りました。面白いと思っていただけたら幸いです。

 

桃の歴史について調べてみた


まずは、桃の歴史について調べてみました。
原産地は中国の西北部です。
現在は陝西省やウイグル自治区などが位置しており、古都として知られています。
漢代(紀元前206年~220年)では長安という名で呼ばれ、シルクロードの起点にもなっています。
野生の桃が何時代から存在しているのかまでは、調べきることが出来ませんでしたが、
少なくとも春秋・戦国時代(紀元前770年~紀元前221年)から桃が食べられていることが分かっています。
というのも、孔子(紀元前552年~紀元前479年)が著した「詩経」の中で、
桃のことが述べられているからです。
同時期の日本は縄文時代です。そんな大昔から桃が存在しているとは驚きです。
そして驚くべきは、この時代既に、桃が人の手によって栽培されていたことです!
「園有桃、其実之殽」(園に桃があり、その実を味わう/食う)
という歌いだしから始まる「魏風」では、他にはナツメについても描写されています。


ナツメは楊貴妃が欠かさず食べていたといわれています。
確かに、どちらも中国には欠かせない果実というイメージがあります。

そして、唐代(618年~907年)には桃は広く栽培され、栽培技術も確立していた、と考えられています。
「種樹書」という書物には、
「桃をすももに接げば、赤くかつ甘くなる。
柿を桃に接げば、金桃になるが、梅を桃に接げばもろくなる」
という記述がされています。
この時代、日本は大和時代~飛鳥時代です。
千数百年前から桃の栽培技術が研究され、試行錯誤を重ねた結果、
今私たちが食べている、今年私が「甘くて美味し~い」と思った桃が
作り上げられているんですね…
桃、大事に食べます。

 

孫悟空も踏んだり蹴ったり

実際に桃が食べられていた、という記録だけでなく、
故事や物語にも桃は数多く登場します。

例えば西遊記伝説で、孫悟空が天竺を目指す旅に出るきっかけとなったのも、蟠桃です。
西王母という女神の誕生を祝う会、
蟠桃会(ばんとうえ)に孫悟空だけ呼ばれませんでした。
それに腹を立てた孫悟空は、西王母の所有する桃園から、桃を盗み食いしてしまいます。
桃園の桃の木は数千本にも及び、3000年に一度、
6000年に一度、9000年に一度実がなる桃が育てられているそうです。

当然西王母から怒られ、五行山に投獄され、通りがかった三蔵法師に
助けられたところからは、広く知られている西遊記の物語が進んでいきます。
誕生日会にも呼ばれず、桃を盗み食いしたら怒られ、孫悟空も踏んだり蹴ったりですね。

また、西王母と桃は繋がりが深く、西王母の誕生日は3月3日、
現在でも桃の節句と呼ばれています。

この他にも桃にまつわる物語はありますが、怪異を鎮めたり、
女神である西王母が登場したりと、桃を神聖なものとして扱っているものが多く見受けられました。
古来中国では、桃の木を仙木、果実を仙果と呼び、魔よけや不老不死の力があると考えられていたそうです。
その名残で、中国では誕生日に長寿を願って桃饅頭を食べているとか…

今は「桃=神聖なもの」というイメージは少ないですが、
日本にも、桃は聖なるものとして伝わってきています。
日本最古の歴史書、日本書記で、イザナギがイザナミに会いに黄泉の国へ行った場面でも、桃が登場します。
詳しくは省略しますが、イザナミの足止めをしようと黄泉の国の出口、平良坂で
イザナギが投げたものの中に、桃があります。
この投げた桃がオオカムヅミノミコトとなり、それが桃太郎になった、という説があります。
私は今回桃の歴史を探るまで、全く知りませんでした。


そもそも、桃が神聖なものと考えたこともありませんでしたし、
紀元前から存在していることも、初耳でした。
調べていくと、他にもどんどん面白い話が出てきます。
桃の語源であったり、三国志の逸話だったり、時代ごとの品種だったり…
興味をもたれたお話はございましたでしょうか。
桃をただ食べるのも良いですが、ルーツを探ってみると、意外なことまで知ることが出来ました。
みなさんも、シーズンが終わってしまう前に、一度桃のことを調べながら召し上がってみてはいかがでしょうか?

 

出典

参考文献・参考サイト
王 秀文(1998) 『桃の民俗誌-そのシンボリズム(その一)』
同上(1999) 『桃の民俗誌-そのシンボリズム(その二)』
若林歩(2012)『西王母と桃の関係性 : 不死の薬と仙桃・蟠桃』
雨宮久美(2017) 『桃の文化的表象-日中比較の視点から』
有岡利幸(2012)『桃』(法政大学出版局)

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