
こんにちは。豊洲市場ドットコムの八尾です。
房州枇杷は毎年人気の商品ですが、今年は特に美味しい生産者がいらっしゃるということで取材に行ってまいりました。
園主が「完熟」を見極めて収穫する枇杷は、一味違う美味しさ。その栽培の秘密にも迫ります。

千葉県富津インターを降りてすぐのところにある、谷柴農園の直売場です。
ちょうどこの日は、5月上~中旬にかけて旬を迎える品種「なつしずく」の最後の収穫ということで、たくさんの枇杷が並んでしました。
他にも大粒の大房(たいふさ※たいぶさ/おおふさ とも読む)など、美しく豊かな枇杷がたっぷりと並んでいました。
駐車場には多摩や世田谷ナンバーの車も見受けられます。わざわざここまで買いに来ているということで、その人気ぶりに驚きました。

こちらは「少し熟し過ぎてて売り物にはできない」という枇杷です。なるほど、確かに市場で見る枇杷より数段色が濃いように見えます。

剥いてみるとこれまで、果肉の色が濃い。
この時期の枇杷は黄色い果肉のイメージですが、こちらではオレンジ色です。
もちろん味わいも濃厚で、コクがあり、華やかな香りと共に果汁があふれ出す、素晴らしい仕上がりです。

完熟にこだわる谷柴農園の枇杷。
しかしそれだけではありません。
誰にもまねのできない、南房総でも独特な、土地の特性を生かした栽培方法がこの美味しさの秘訣です。

園主の和泉澤千寿さんです。
和泉澤さんは三代続く枇杷の農園を受け継ぎ、土地の力を活かして特別な美味しさを作り出します。

まるで絶壁のような斜面に広がる、和泉澤さんの枇杷です。
房総半島は、平地が多い千葉県の中でも高低差の多い地域ではありますが、
それでも枇杷の栽培地で言えば、なだらかな丘陵が中心。これほどの斜面にある枇杷の畑は見たことがありません。
道中も狭い道が続き、軽トラでギリギリの場所。
正直「とんでもないところに来たな…」という思いがありましたが、この土地が美味枇杷を生み出す要素に触れ、どんどん好きになっていきました。
その魅力を、皆様にもお伝えします。

まずは抜群の日当たりです。
この辺は「南無谷(なむや)」という土地で、房総半島からさらに海に突き出た形になっています。
そのため周囲に日差しを遮るものが無く、抜群の日当たりを実現しています。
光合成を高めた枇杷は、栄養をどんどん吸い上げ、大粒に味が凝縮した、濃厚な枇杷に育ちます。

更に土質にも特徴があります。
南房総の枇杷産地と言えば館山などが有名ですが、その地域は黒土が多く、
ここまで水はけのよい、砂地の土地はあまりありません。
更に石垣と急斜面により、水が切れ、枇杷が凝縮するのです。
和泉澤さんはそんな土壌に、鶏糞を中心とした有機質の肥料を施し、じっくりと栄養を供給し味わいを高める栽培を行っています。
さらには、海からの潮風が運ぶミネラルが、土壌に微量成分を供給し、味に奥深さを加えるのです。

そして細やかな栽培管理です。
枇杷の樹は上に伸びる習性があるため、枝を落とし樹形を管理することを怠りません。
急斜面での作業は大変ですが、代々受け継いできたこの土地が生み出す枇杷の美味しさを、実直に守ってきました。
また、綺麗な枇杷を作り出すために、1個1個丁寧に袋掛けをします。
地域によっては枝ごとに大きな袋をかぶせることもありますが、千葉では1個ずつに袋をかぶせます。
そして、ここからが和泉澤さんの真骨頂です。

熟度を自らチェックして、完熟を見極めて収穫するのです。
枇杷は熟成が一気に進む果実で、流通を考えるとどうしても早取りをしてしまう生産者が多いです。
しかし、和泉澤さんは3~4日ほど長く樹にならすことで「完熟」に仕上げ、コクのある濃厚な枇杷を生み出しているのです。
収穫期を逃すと出荷できなくなってしまうリスクはありますが、美味しさには代えられません。

情熱をこめて作られた枇杷は、ご家族が大切に箱詰めをして販売しています。
南無谷という特別な土地と向き合いながら、和泉澤が生み出す完熟枇杷。
初夏の贈り物に、ぜひお使いいただきたい一品です。

以上、今回は南房総の枇杷を取材してきました。
写真は和泉澤さんと青果担当の冲田です。栽培に関わる情報をご指導いただきました。
市場の中の情報だけでは、なかなか出会えない生産者と今回ご縁ができたことが大変うれしいです。
皆様にお届けできる日が楽しみです。ぜひご期待ください。
