熊本県上天草市 アマモ場で育った牡蠣

オペレーション部の前田です。

近年、全国でアマモ場再生活動の取り組みが行われています。

アマモ場で美味しい牡蠣を養殖している個人生産者西口さんがいる

とのことで、早速熊本県上天草市へ飛びました。


アマモ(甘藻)とは海草の一種で、岩に固着する海藻とは違い、海底に根を張るイネ科の種子植物。

別名は「リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ(竜宮の乙姫の元結の切り外し)」、植物では日本一長い名前を持つ。

海水の浄化作用と光合成による酸素供給で、アマモ場と呼ばれる群生地一帯は生態系に好循環をもたらしていた。

アマモが生み出す酸素や有機物で栄養豊かなアマモ場にはプランクトンが多く生息する。海流が緩やかな場所に群生するアマモ場は、プランクトンを求め集まってくる海の生き物にとっても産卵や稚魚の成育に格好の隠れ家であり、それがアマモ場が「海のゆりかご」といわれる所以。

西口さんが海から引き上げた牡蠣の養殖籠を見ると、表面一面にびっしりとピンク色の産毛のようなものが動いている。アミ類や海老の赤ちゃんだ。

生き物の楽園であるこのアマモ場では、殻に付着した藻やフジツボ、多種多様な生き物を取り除いてあげなければ窒息してしまうため、牡蠣は海に入れてから3か月ほどで引き上げる。

牡蠣小屋で「これがいいかな、これはまだ早いかな」と西口さんが愛おしそうに選んでくださった牡蠣をいただいた。

臭みは一切ない。アマモ場の生態系が牡蠣の生育場所の浄化をしてくれている証拠だ。

西口さんの牡蠣の味わいは3段階

1.口に含んだ瞬間はさっぱりとした感覚で、いくらでも食べられてしまいそう。

2.その後、磯の香りが鼻を抜ける。

 淡泊で食べやすいだけの牡蠣では物足りない。牡蠣にはやっぱり磯の香りがほしい。

 しかし臭みとは違う。臭みの一歩手前ギリギリ、芳醇な磯の香りが広がる。

3.最後までコリコリと食感の残るひも(外套膜)が、ものすごく甘い!

 苦みの原因ともなるこの部位だが、噛めば噛むほど甘みが湧いて出てくる。

 いつまでも噛みしめ続けたいと感じるほどだった。

「全てはアマモのおかげ」

「この牡蠣を通じてアマモの大切さを皆さんに知ってほしい」

決して「凄い牡蠣」と言わず、「アマモが凄いんだ」と熱く語る西口さん。

「ここも埋め立てや温暖化による海水温の変化で環境が変わり始めている」と苦しい心のうちも話してくださった。

西口さんの想いとともに、「海のゆりかご」からいただいた牡蠣をお客様へ届けたい!巡り巡って、大幅に減少したアマモを守り、再生することに繋がればこんなに素敵なことはない。そう感じた今回の熊本上天草への訪問。

熱い想いが通じたのか、台風の雨雲が明け、眩しいくらいの晴天となった。

きっとアマモも嬉しそうに光合成をし始めているはずだ。