金沢の8月、お茶席にお目見えする「蓮根羹 はすねかん」を作ってみた【特派員ブログ】

つぐまたかこ
つぐまたかこ

こんにちは。
うまいもん特派員・北陸担当のつぐまたかこです。
8月の新盆前後、金沢のお茶席では「蓮根羹(はすねかん)」という生菓子が登場します。

加賀野菜のひとつ、れんこんを使った和菓子なのですが、この時期にしか作れない、日持ちもしないという、ちょっとレアなもの。すりガラスのようにうっすらとした透明感があり、上品な甘みの中に、れんこんの食感とつるんとした口当たりが絶妙な、なんとも涼しげなお菓子です。残念ながらお茶席にお招きいただく機会がなかったので、自分で作ってみました。

8月上旬、今年も加賀れんこんの出荷が始まりました。金沢の伝統野菜「加賀野菜」のひとつ。もっちりとした食感が特徴のれんこんで、その特徴をいかし、郷土料理の「はす蒸し」や「れんこん汁」に使われるのですが、この時期の、出始めの新れんこんはちょっと違います。「もっちり」ではなく「シャキシャキ」。加賀れんこんらしからぬ食感なのです。採れたてを生で食べてみるとよくわかります。ちょっと甘くて梨のような感じ。そして、この食感でしか作れない…すなわち8月のれんこんでしか作ることができないのが、今回チャレンジする蓮根羹なのです。

金沢の直売所には、1本や節ごと、小さいものまとめてなど、いろいろな加賀れんこんが並んでいる。

れんこんは、1本の中でも節によって食感が違います。最初にできる節から順に、「長男・次男・三男」と呼んでいる生産者さんもいます。若いほどシャキシャキしているそうなので、今回、蓮根羹作りには、先っちょの三男れんこんを使いました。
レシピは、通っている茶道教室の先輩マダムが、先生にダメ出しをされながら研究を重ねたという秘伝(?)のものです。

材料は次の通り。たった4つ。これだけです。
・加賀れんこん 
・棒寒天 
・葛 
・砂糖 

寒天に少し葛を混ぜるのがポイントだそう。今回は、地元の宝達葛を調達。


加賀れんこんは、おろして使います。「フードプロセッサーはだめよ」と、私のやりそうなことを先回りして、マダムには念を押されていました。やっぱり、手間を惜しんじゃいけません。手間ついでに、真っ白に仕上げたいので、れんこんは、おろす前に酢水につけて変色を防ぎましょう。「粗めにおろす」と、レシピに書いてあったので、鬼おろしを使ってザクザクと。できあがったボウルの中を見て「ちょっと粗すぎかも?」と思ったけれど、もうあと戻りは出来ません。

さすが鬼おろし!のザクザク感。水気も出ていない。

水でふやかして火に掛け、溶かした寒天は一度漉します。こういうひと手間が、大事なんですね、きっと。そこに砂糖と、水で溶いた葛を入れ、混ぜます、混ぜ続けます。「透明感が出るまで」と。おお、なんか透明になってきた、と思ったら、おろした加賀れんこんを入れてさらに火にかけながら、2〜3分混ぜ続けます。これはデンプンのくさみを飛ばすためだそう。

材料を合わせたら、あとはひたすら混ぜる。単純だけど、これが思いのほか重労働。

火からおろしても、粗熱がとれるまで、混ぜ混ぜは続きます。ここでちゃんと混ぜ続けないと、できあがりが2層に分かれてしまうんです。それは美しくない。ただ、温度が下がるにつれて、寒天はゆっくりかたまり始めるので、だんだん重たくなってきます。それでも混ぜる、混ぜる。妙齢女子の右腕に乳酸がたまり始めます。夏のキッチン、汗ばみます。混ぜ混ぜ、混ぜ混ぜ…。


混ぜ続けて和菓子職人さんの大変さを、垣間見たような気がするころ、混ぜ混ぜとの闘いは終了。粗熱のとれたものを流しかんに移します。冷し固めたら、できあがり。

すぐに冷蔵庫に入れたいので、氷水を張った中で流しかんに。

切り分けるとき、ザクザク感が強すぎて、切り口がちょっとお下品な感じになってしまいましたが、プロとはひと違う、素朴な食感に仕上がりました、と自画自賛。


試食をしてくださったマダムは「この食感もおいしいね」と優しいお言葉。「次は、鬼おろしを使うなら、半分は普通のおろし金でおろしたのと混ぜてもいいかもしれんね」と。混ぜ混ぜの重労働を考えると、次に作るのは、来年かもね、8月ももう終わりだし…と自分に言い訳しながら、直売所でまた、よさげな加賀れんこんを物色してしまいます。ちょっと不格好だったけど、できたての蓮根羹は、やっぱりおいしかったのです。
でも、来年の8月は、お茶席で菓子司の職人が作った、なめらかな蓮根羹も味わえますように!