オリーブ豚のポルケッタ ~名店の味に学ぶ~

こんばんは。豊洲市場ドットコム肉担当の高岡です。

皆さんはポルケッタという料理をご存知でしょうか。現在のイタリア・ラツィオ州を発祥とする、豚肉の香草焼きのことです。一説には、その起源は紀元前にも遡るとされ、古代ローマの饗宴で供された伝統的な料理だといいます。

古くから存在する料理だけあって、材料は豚肉と塩、そして数種類のハーブと香辛料で非常にシンプル。素材の味が生きる料理であるが故に、ハーブの配合や焼き方で出来が左右されそうです。

まずは、代官山にあるイタリアンの名店falòのポルケッタを食べて、味の参考にしてみようと思います。
falòのポルケッタは、下記のリンクから購入できます。

付属のラタトゥイユを添えて、いただきます。もうこの時点で炭とハーブのいい匂いがします。

まず、ガリっという音。粒の粗い塩が砕けて、強い塩味が感じられます。豚肉は焼き目がパリっとして、甘い脂身とジューシーな赤身が美味しいです。咀嚼するうちにハーブの爽やかな風味が口いっぱいに広がってきて、わずかな苦味が豚脂の甘さを引き立ててくれます。それから、恐らくクミンか何か、独特のエキゾチックなスパイスが隠れた余韻を奏でていて、どこかクセになる面白い味です。

ラタトゥイユと交互に食べると、トマトの柔らかな酸味、ナスとズッキーニの甘みが、塩とハーブの強烈な後味を和らげて、もう一度ポルケッタを口に運びたくなります。

確実にワインが欲しくなる味です。この時はボルドーのカベルネ・ソーヴィニヨンが開栓済みだったので、それを合わせてみました。肉料理との相性は良いはずですが、牛肉とならまだしも、豚肉の繊細な甘みを堪能するにはタンニンが強いかなと思いました。それこそ、ラツィオ州産のワインと合うのではないでしょうか。

さて、これを踏まえて、いざポルケッタ作りに取り掛かります。

これはオリーブ豚のバラ肉、約1kgです。その名の通り、オリーブの搾りかすを加工した飼料を与えて育てている、香川県のブランド豚です。研究機関の調査によると、甘み成分のフルクトースが一般的な豚に比べて1.5倍多いそうです。肉の保水力も高いので、しっかり焼いてもジューシーな味わいになるはず。

余分なスジと筋膜を取り除いたあと、肉の重量の1%の天然塩をすり込んで、丸めて成形しつつ一晩冷蔵庫で乾燥させます。falòの樫村シェフ曰く、ポルケッタに使う塩は肉の1.3%程度とのことだったので、塩分を少なくして自分好みの味になるように調整しています。

ハーブはイタリアンパセリ、ローズマリー、スイートバジル、セージ、ディルの5種類。それらをニンニク、オリーブオイルと一緒にハンドブレンダーで攪拌してマリネ液を作ります。乾燥させた豚肉を一度広げ、巻き戻しながらマリネ液を豚肉で挟み込んでいきます。料理用のたこ糸で肉を縛り上げ、形が崩れないようにしたら、数時間冷蔵庫に戻して味を馴染ませてから焼きます。

表面に良い焼き色がついて、脂がじわじわと溶け出してきました。そうしたら、肉をアルミホイルで包み、オーブンレンジへ。150℃で1時間半、中までじっくりと火を通します。

余分な脂がかなり落ちて、肉が引き締まったような気がします。断面はこんな感じ。肉汁が溢れ出て、美味しそう!
ハーブの色も加熱前と比べて、やや黄緑がかって小麦色に近づきました。

1人前の分量に切り、最後の仕上げに表面をカリっと焼き上げたら、完成!

ブラックペッパーを軽く振り、脂っぽさを和らげるためにベジマカと白ワインビネガーのソースを添えました。

そして、この日はイタリアンを満喫するためにフルコースを用意。

アンティパスト(前菜)は、豊洲で仕入れた愛媛県産の真鯛と、熊本県津奈木町のコハク玉ねぎでカルパッチョ。
一晩昆布締めにした真鯛はモチっとした食感で、濃厚な甘さを感じます。コハク玉ねぎはほとんど辛みがないので、生でも甘くて美味しいです。
一人分の分量のカルパッチョを綺麗に盛り付けるのは難しい……

プリモ・ピアット(第一の皿)は、長野県産アメーラトマトのプッタネスカ(娼婦風パスタ)。
フレッシュトマトを煮詰めると、とても味の濃いソースになります。ニンニクやアンチョビ、唐辛子の風味がトマトのうま味を引き立てていて、最後に削りかけたペコリーノ・ロマーノの羊乳のうま味も相まって素晴らしい出来です。

そしてセコンド・ピアット(第二の皿)は、メインの香川県産オリーブ豚のポルケッタ。
カリカリになった豚の脂が甘くて美味しい!とてもジューシーで脂っこい料理ではありますが、ハーブの苦みとビネガーソースの酸味があるので飽きが来ない味です。
ワインは今度こそラツィオ州産の赤ワイン。果実味の強い爽やかな酸味のワインが実に良く合います。

コントルノ(付け合わせ)は、北海道の滝本農場のアスパラガス3種のグリル。
まったく筋ばっておらず、瑞々しく甘いアスパラガスは、さっと焼くだけで美味しいです。

ドルチェ&カフェーは、北海道・小樽の白ワイン(品種:ナイアガラ)を使用したジェラートと、イタリアンローストコーヒーです。
あれ、写真はどこに……程よく酔いも回って写真を撮り忘れる痛恨のミス。仕方ないので、またの機会にお披露目することにします。

ご馳走様でした。